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18話 予備の家具と、突きつけられた境遇の差

Auteur: みみっく
last update Date de publication: 2025-10-03 06:00:09

「そのうちに俺に呆れて治まると思うよ」

 俺は、冗談めかして言った。

「その様な事は決してありませんわ!」

 ミリアは力強く断言した。その声には、揺るぎない決意と、俺への深い愛情が込められていた。

♢予備の家具とユウヤの境遇

 全く同じ木製で頑丈で重そうな大きいテーブルを男性の使用人が四人掛かりで運んできた。その立派さに、俺は少し驚いた。彼らは額に汗を浮かべ、重そうなテーブルを慎重に運んでいた。

「ん? 同じテーブルの予備があったの?」

 俺は、思わず尋ねた。

「お気に入りだったので予備で購入してありましたわ」

 ミリアは誇らしげに答えた。お気に入りだからって場所を取るテーブルのストックって……彼女の言葉には、どこか自慢げな響きがあった。

「ソファーも、あったりするの?」

 俺は、さらに尋ねてみた。

「ええ。勿論ありますわよ」

 まぁ……その気持ちは分かる。気に入った物は、俺も予備を買っておきたいと思ってるけど規模が違うな。前世では、パソコンで使用するお気に入りのマウスとキーボードの予備を買うのが精一杯かな……。それと、お気に入りのカップラーメンやお気に入りの調味料のストックかな。

 お気に入りの家具は無かったしな……家具といえば安い椅子とテーブルだったし、ソファーなんて置くスペース無かったし、安い服を入れるプラスチック製の収納ボックスだったしなぁ。しかも現在は宿無しの居候だし……俺は、自分の境遇とミリアの境遇を比べて、少しばかりの寂しさを感じた。

♢思いがけない提案、不安と焦燥

「お気に入りはストックしておきたいよな」

 俺がそう呟くと、ミリアの青く透き通ったキラキラした瞳が輝いた。その光は、純粋な喜びで満ちていた。

「はい♪ 気が合いますわね……嬉しいですわ」

 ミリアは満面の笑みで同意した。その笑顔は、ユウヤとの些細な共通点を見つけただけで、世界が色づくように見えた。お金もかなり貯まってるし、そろそろ自分の家を買ってお気に入りの家具を揃えるのも楽しそうで良いかもな。それに婚約者とは言え、ずっとお世話になりっぱなしじゃ悪いよな。

「俺も家を買ったら、お金もあるし家具に拘ってみようかな……」

 その言葉を聞いた瞬間、ミリアの身体が一瞬にして固まった。表情からはさっきまでの明るさが消え失せ、たちまち不安と焦燥が押し寄せる。まるで、目の前の幸福が音を立てて崩れ去るかのような、言いようのない恐怖が彼女の心を支配した。

「え? 出ていかれる気なのですか? え……? 何でですの? ご不満があるのなら言ってください! 即、改善いたしますわ!」

 ミリアは顔を青ざめさせ、必死に訴えかけてきた。その声は、今にも泣き出しそうで、喉の奥から絞り出すような悲痛さがにじむ。ユウヤを失うことへの純粋な恐れが、その瞳の奥で激しく揺れていた。

「え? だって婚約者だけど、いつまでもお世話になってちゃ悪いでしょ?」

 俺もミリアの剣幕に押され、思わず言い訳をしてしまった。

「婚約者ですよ? 何を仰っているのですか? 悪いわけないじゃないですか! そんな事を言わないでください……一緒にいてください!」

 あまりにも慌てているミリアの剣幕に、つられて俺も慌てて必要のない言い訳をしてしまった。彼女の必死な言葉一つ一つが、ユウヤの胸に突き刺さる。

「いや……自分の部屋も欲しいし……」

 実際には必要性を感じた事は無いんだけど、とっさに出た言葉だ。

「部屋なら、いっぱいありますしご自由にお使いください! 狭かったのですか? 大きい部屋もありますし2部屋でも3部屋使っていただいて構いませんよ」

 ミリアは捲し立てるように言った。その目には、今にも零れ落ちそうなほど涙さえ浮かんでいるように見える。彼女の必死さは、ユウヤを手放したくないという、純粋で強い気持ちの表れだった。

「あ……今の部屋でも十分広いですし、満足してます」

 寝るだけの部屋だし……普段はリビングでミリアと過ごしてるので部屋の大きさは関係ないし、荷物もないので、ベッドがあれば物置の部屋でも良いくらいかな。

「でしたら……出ていくなどと言わないでください」

 ミリアは、有無を言わさぬ口調で俺を見つめた。その瞳には、強い決意と、わずかな懇願が宿っていた。彼女の視線は、ユウヤの心を縛り付けるかのように強く、甘かった。

「あ、はい……」

 押し切られてしまった……でも他の国も見てみたいし、家を買うにしてもまだ早いかな。いや出ていく必要は無いから部屋に必要な物を買えば良いのか……って言っても十分に、ミリアが豪華でステキな家具を揃えてくれてるんだけど。

「ミリアみたいにお気に入りの家具を買ってみたいな~って思ってさ」

「あぁ~そういう事だったのですね。お気に入りの物があれば使用人にお申し付けくださいね」

 ミリアの表情がパッと明るくなった。その顔には、まるで曇り空が晴れたかのような安堵の表情が浮かんだ。誤解が解け、心の重荷が下りたように、彼女の全身から力が抜けた。

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